2015年6月、世界最大のコンピュータゲーム見本市、Electronic Entertainment Expo(通称E3)において発売が発表された一本のゲームソフトが注目を集めました。
その作品のタイトルは『人喰いの大鷲トリコ』……最初の発表から6年越しの発売決定は大きな話題を呼びました。
■ゲームクリエイター上田文人氏の最新作
『人喰いの大鷲トリコ』はゲームデザイナー、上田文人氏の最新作です。
上田氏は元ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の社員で、プレイステーション2用のタイトル『ICO』と『ワンダと巨像』でその名を世界的に知られています。
ICO
ワンダと巨像
『ICO』は日本国内での発売当初、ほとんど話題になりませんでしたが、海外でその絵画的に美しい映像と言葉(テキスト)にほとんど依存しない詩情あふれるストーリー性が高く評価され、国内でも熱狂的なファンを増やしました。小説家の宮部みゆき氏が惚れ込み、自らSCEにノベライズの企画を持ち込んで出版に至ったというエピソードも有名です。
続く『ワンダと巨像』も、ICOに劣らぬ映像的表現とゲームとしての骨太なアクション性が大きく評価され、上田氏はクリエイターとしての地位を確立しました。
その上田氏の最新作として2009年にアナウンスされたのが『人喰いの大鷲トリコ』です。謎の巨大生物トリコ(人喰いの大鷲)と少年が力を合わせ、広大な遺跡の中で冒険を繰り広げるというその内容は『ICO』と『ワンダ』両作に通じるものがあり、上田文人作品の集大成として期待を集めました。
■紆余曲折を経て、ついに発売決定
2009年にプレイステーション3専用ソフト発表された当初、発売時期は2011年とされていました。
しかし、その後制作の都合という理由で発売の延期が発表されます。
SCEは開発が進展していると発表していましたが、2013年にはディレクターを務めていた上田氏がSCEを退社したことが報じられ、制作中断の噂が流れました。同年6月にはSCEアメリカの関係者が制作が中断状態にあるとコメントを発表、これはSCE本社が即日否定しましたが、ファンの間には制作の継続を絶望視する見方が強くなっていました。
しかし2015年6月、E3で5年ぶりの新作映像が上映され、プラットフォームがプレイステーション3からプレイステーション4に変更になったことと、2016年の発売が発表されました。
上田氏はSCE退社後もフリーランスとして『人喰いの大鷲トリコ』の制作に参加、また、上田氏の元でゲーム制作に携わってきたメンバーが立ち上げた「gen DESIGN」が2014年から同作の制作に参加していることも公表されています。
紆余曲折を経て、ようやく発売が決定した『人喰いの大鷲トリコ』。今から発売が楽しみですね。