ほとんどのコンピュータゲームは視覚情報に頼っていますので、視力障害のある人にとっては非常にハードルが高いものです。
アメリカ人の盲目の男性が5年の歳月をかけて3Dアクションゲームをクリアし、海外のネットで大きな話題を呼んでいます。
■バリアフリーのゲームソフトの開発も行われているが……。
テレビゲームはその名が示す通りテレビ(ディスプレイ)に表示される映像を使って遊ぶことが基本です。このことは、視覚に障害を持つ人にはゲームをプレイすることが非常に高いハードルになっていることを意味します。
音楽でリズムを取る、いわゆる「音ゲー」など、音をシステム上重視しているようなゲームなら、ある程度練習を重ねることで視覚障害者でもプレイすることはできますが、それでも、ある程度事前の知識がないと習熟は困難であることには違いありません。
視覚障害者でも遊べるゲームソフトを作ろうという動きは以前からあります。
2002年にはオランダのユトレヒト芸術大学で音響学を学んでいた学生3人が、視覚障害者用に音だけを使ったパソコンゲームを開発、ネットでも話題になりました。
3人が作ったのは『ドライブ』という、実験機のテストドライバーとして音を頼りにカーソルで機体を操作、ブースターを拾い集めて最高速度を競う、という内容でした。
個人単位や研究チームによる視覚障害者向けのゲームソフト開発はそれなりに行われてはいるものの、現状、商業タイトルとして発売されたという事例は少なく、今後のゲーム業界の課題と言えるかもしれません。
■音だけを頼りに『ゼルダの伝説』を完全クリア
アメリカ人男性のテリー・ギャレットさんは全盲の視覚障害を持つゲームプレイヤーです。5年ほど前に2Dのアクションゲームをクリアし、その動画をYouTubeにアップしたギャレットさんが続いて挑戦したのは、任天堂の人気タイトル『ゼルダの伝説 時のオカリナ』でした。
実は以前にも『ゼルダの伝説』をクリアしたことがあったギャレットさんでしたが、その時は補助してくれた人がいました。今回彼は、なんと補助なしで完全クリアを目指しました。
もちろん、『ゼルダの冒険』は元々目を頼りにしてプレイするゲームですから、通常の環境でプレイすることはできません。
ギャレットさんは攻略サイトの情報をテキスト読み上げ機能を使って聞き、さらにYouTubeの攻略動画でゲーム中の音をすべて記憶したということです。
また、ギャレットさんはステレオスピーカーをチェアの左右に取り付け、SE(敵の発する音や自分が使う剣の音など)を頼りにゲームをプレイ。また、プレイに使ったのは本来のゲーム機用のソフトではなくエミュレーター版で、元々は存在していないクイックセーブ&ロードの機能を駆使してトライアンドエラーを繰り返しました。
一度は挫折しかけたものの、ギャレットさんは約5年の歳月をかけてついに『ゼルダの伝説』の完全クリアを達成。その一部始終はYouTubeにアップされています。