現在PCはWindowsとMac、スマホはAndroidとiPhoneと、それぞれ2大勢力によって支配されています。
その両方に関わっているのがApple社となります。
ところがゲーム機の世界においては、Sony、任天堂、Microsoftの3社によって占められ、そこにAppleの名前はありません。
Appleがゲーム機に携わったらもっとスタイリッシュで洗練されたものができるのでは、と思う方もおられるかもしれません。
実はAppleにはゲーム機に関わって信じられない結果をだした過去があるのです。
■Macとの互換性を持った画期的なゲーム機『ピピンアットマーク』
1990年後半、多くのメーカーがゲーム業界に参画し様々な種類のゲーム機が乱立した当時、バンダイがAppleからのライセンスを受けて作ったのが『ピピンアットマーク』です。
AppleはMacに搭載していた『Mac OS』を簡略化したOS『Pippin』を開発、それをバンダイの開発したハードに載せたのが『ピピンアットマーク』となります。
簡易OSを持っているということで、Macで動くゲームが使えるという強みを持っていました。
画期的なのはそれだけではありません。
豊富な周辺機器を用意し、当時急速に普及しつつあったインターネットへの接続、タブレット付きキーボードによるチャット機能など、マルチメディア色が強いゲーム機として発表された時には多くの人から注目を浴びたのでした。
■世界で出荷された数、わずか42,000台
マルチメディアを強調して販売されたゲーム機でしたが、いくつもの問題を抱えた結果、歴史に残る惨敗をしてしまいます。
ゲーム機でありながらソフトが揃っていなかったこと、ライバル機より本体の性能が劣っていること、そして何よりも本体がPlayStationの3倍という高値だったのが致命的でした。
日本では「インターネットをテレビで見よう」というキャッチコピーが使われるだけで、これがマルチメディア対応ゲーム機であると思わせるにはかなり無理のある内容で売りだされます。
これはあきらかなマーケティングミスで、ただのインターネット接続機としか思われない出来でした。
続くアメリカでもその性能に合っていない価格から敬遠され、日米合わせて30万台の販売予測に対してわずか42,000台という数字で終わってしまいます。
結果、Appleが関わったゲーム機『ピピンアットマーク』は1年程で姿を消すこととなりました。
Appleが関わったのはOS『Pippin』の部分であって、ゲーム機全体としてはバンダイの企画・戦略です。
したがって『ピピンアットマーク』の失敗がAppleにあったとするのは少し違和感を覚えますが、今でもApple最大の失敗の一つとして語られています。
■10年早かった『ピピンアットマーク』
いまでこそインターネットに接続するゲームは当たり前になっていますが、インターネットが普及し初めた頃にその機能を持っていたゲーム機は革命的でもありました。
しかしそれを活用できる環境もソフトもなかったことが、唯一とも言える長所を潰してしまう結果となりました。
あと10年遅く登場していれば評価は変わっていたことでしょう。
そんな10年後の2007年、『Apple TV』が発売されました。
Mac OSをベースとしたソフトウェアを搭載し、ネットワーク接続で様々なコンテンツが楽しめるようになっています。
もちろんゲームもできるようになっています。
機能的には『ピピンアットマーク』が持っていたものとほぼ同じです。
『Apple TV』はゲーム機ではないため、その市場に名を連ねていません。
しかし独自の路線でエンターテイメントを提供してくれている点においては評価される点です。
さすがAppleといったところでしょうか。
『ピピンアットマーク』が成し遂げられなかったものは、10年後にApple自身の手によって叶えられたということです。
(公式サイト)
Apple TV
http://www.apple.com/jp/tv/