夏休みの1カ月間を日常と異なる場所で過ごし、いろいろな人との出会い、心躍る冒険に明け暮れる、最近では見なくなったジャンルですが、そんなほのぼのとしたゲームが以前は存在しました。
『ぼくのなつやすみ』や『どうぶつの森』シリーズがその代表とされますが、そのシリーズが始まる前にこのジャンルの伝説となったゲームが存在していたのです。
■『どきどきポヤッチオ』というゲーム
恋愛ゲームや育成ゲームが人気だった1998年、『どきどきポヤッチオ』という、名前を聞いただけではまったく何をするのかわからないゲームが発売されました。
タイトルの上には「アクティブコミュニケーションゲーム」と書かれていましたが、そんなジャンルのゲームは他にはなく、やはり何をするのかわかりません。
パッケージにはホウキにまたがって飛んでいる女の子のイラスト、当時流行っていた恋愛ゲームの一つかと思っていた人も多かったのではないでしょうか。
実はこのゲーム、非常によく出来たシステムを使った生活シミュレーションだったのです。
夏休みの1カ月間、パン屋を営んでいるいとこのお姉さんの住む小さな村に行きます。
そこでお姉さんの仕事の手伝いをしながら、村人25人と仲良くなって一緒に遊んだり、頼まれた用事をこなしたりして過ごすのがこのゲームの目的です。
ヒロインに該当する女の子は6名で、それぞれ悩みを抱えています。
その子達と仲良くなればその悩みを解決することになり、最終的には特別なエンディングが見られるようになるのですが、主人公も女の子も12歳から14歳の間なので恋愛関係には少し遠い間柄で終わってしまいます。
大人から見ると微笑ましい関係ですね。
25人が生活している中で1カ月を過ごすゲーム、それが『どきどきポヤッチオ』です。
■『どきどきポヤッチオ』が伝説のゲームと言われる理由
この当時のゲームはプレイヤーが操作する主人公に合わせてコンピューターキャラは動いていました。
つまり事前に配置された場所で、プレイヤーの選択や移動といった一定の条件が満たされるまで動かない、そんなシステムで動いていたのでした。
それに対し『どきどきポヤッチオ』のキャラクター達は、複数のパターンを組み合わせた生活サイクルを個別に持っていて、プレイヤーの意思とは関係なく動き回ります。
ゲームキャラも生きていると感じさせる仕組みですね。
またこのゲームに戦闘はなく、主人公の成長要素もありません。
パラメーターとしては村人全員が持っている好感度と主人公の空腹度、そしてお小遣いの3つだけです。
そのためプレイヤーはパラメーター上げという作業から開放され、簡単なノルマをこなせば後は自由に動き回れることになります。
ノルマといってもやることは簡単で、毎朝お姉さんから頼まれるパンの配達だけです。
好感度が上がる、それぞれのキャラクターがいる場所に居合わせる、そんな風にしているだけでイベントが発生することがあります。
それはヒロイン以外でも発生します。
どうでも良い人というのがいないのもこのゲームの特徴ですね。
そしてこのゲームは人とコミュニケーションを取るのに一番大切な物を教えてくれます。
「出会った人には挨拶しましょう」
地味なことですが一番確実に好感度を上げる方法です。
これは現実社会にも言えることではないでしょうか。
■いまこそ欲しい生活シミュレーションゲーム
こういう雰囲気のゲームはあまりなく、これまでに発売された物は概ね高評価を得ているものが多いのです。
しかしこのジャンルのゲームはあまり制作されていません。
ハードの機能をフルに使った派手なゲームは見栄えも良く、宣伝効果などもあって爆発的な人気になるのかもしれませんが、そればかりになるとやはり飽きが来てしまいます。
もっと親子でのんびり楽しめるゲームがあっても良いのではないでしょうか。
そんな風に思っていたところ、この『どきどきポヤッチオ』がPlayStationのゲームアーカイブとして復活してきました。
突然の出来事だったので大勢のファンは驚いたことでしょう。
近藤敏信氏の独特なデザインとほのぼのとしたゲーム内容があっていて、本当に癒されるゲームです。
こういったジャンルのゲームももっと出てきて欲しいですね、
ユーザーさんが見つけた発売当時のプロモーションビデ