『ドラクエシリーズ』1作目、勇者がラスボスの『竜王』が投げかけた選択「味方になれば世界の半分をやる」に乗ったことで世界は闇に包まれてしまった、という設定を持つ外伝ゲームが『ドラゴンクエストビルダーズ アレフガルドを復活せよ』です。
ブロックメイキングRPGというジャンルで、『マインクラフト』のように様々なブロックを積み上げて建物を作り、街を発展させていくというゲームですが、RPGと付いていることから、このゲームは非常に凝ったストーリーが展開していくのも特徴です。
■人の望み通りに生きるしかなかった『ドラクエ』の勇者
勇者という肩書を与えられ、いろいろな特権を持たされていた勇者は、自分が望む望まない関係なく人から言われる通りのことをやるしかありませんでした。つまり勇者は自発的に動いていたわけでもなく、自分で何かを選んで決めてきたわけでもなかったということです。
そんな勇者に対して竜王が与えた「選ぶ」という権利、どちらを選ぶのも自由という状況で初めて勇者が自分の意思を示せたこと、結果的には世界を滅ぼしてしまったけれど、選んだ行為そのものは批難されるものではないだろうと語られます。これは現実世界でもありえる話ですね。非常に重い問いかけだと思います。
■自ら生きる道を作り選び続ける『ドラクエビルダー』の主人公
対して主人公はシリーズでも類を見ない奔放さを持った人物になっています。
人が話している途中で寝る、話を遮る、相手によって態度を変えるなど勝手気ままに振る舞います。特に導き手である『精霊ルビス』に対してはっきりと反論するところなどは、自己主張が強いとしか言えません。こんな主人公はシリーズにおいて他に見られません。
主人公は冒頭から「勇者ではないから竜王と戦うな」と言われ続けます。それに対して「世界には興味が無い、作りたいものを作るだけ」と言い返し続けますが、最後には止めるルビスを怒らせてまで竜王を倒しに行く決意をします。
それは「友達が笑顔になれないのは嫌だから」という勇者とはまったく異なる理由で、誰かに頼まれて行くという受身的な考えではありませんでした。
■勇者の末路と主人公の最後
自分の選択によってすべてを失うことになってしまった勇者は、まんまと竜王に騙されてしまい『世界の半分』と書かれた狭い部屋に閉じ込められていました。その限られた空間で自分が王だと叫び、現実から逃避して生き続けるしかなかったのです。
それに対し、自分の役目ではないと言われた竜王退治を自ら選んだ主人公は、その代償として自分に与えられた命を削りきってしまうこととなります。主人公はそれをわかった上でその道を選んでいますので、勇者のように惨めな叫び声を上げることもなく、まっすぐに前を向いて進んで行きます。
結果として世界を滅ぼした、救ったという違いになりましたが、勇者も最後まで自分の意思を持たずにいれば世界を救えたのですから、どちらの生き方が幸せだったのかは一概に言えません。なかなか考えさせてくれるストーリーになっていますね。
■欧米版発売
明確な目的が定まっておらず、プレイヤーの自由にできるサンドボックスゲームに明確なストーリーを入れるという取り入れ立派なRPGとして成立させた本作、国内では2016年1月に発売済みですが、2016年10月に欧米でも発売されることが決定しました。
こんな考えさせられるストーリーがはたして受け入れられるのか、興味は深まるばかりですが、まだまだ盛り上げてくれることには間違いなさそうです。
(公式サイト)ドラゴンクエストビルダーズ アレフガルドを復活せよ
http://www.dragonquest.jp/builders/