コンピュータゲームは映像があって当たり前、最近はVR対応のヘッドマウントディスプレイのリリースも相次ぎ、ゲームにおけるビジュアルの重要性はますます増していると言えるでしょう。
しかし、映像を頼ることができない、あるいはもともと映像のないゲームが存在します。
ものが見えないことは恐怖にもつながる、そんな着想のもとに生み出されたホラーゲームを紹介しましょう。
■“敵が見えない”ゲームの走り・「エネミー・ゼロ」
『見えない脅威』と聞いて、どんなゲームを思い出す、あるいは想像するでしょうか?
特定の年齢以上の方なら、『エネミー・ゼロ』のタイトルを思い出す人が多いかと思います。
『エネミー・ゼロ』は1996年に発売されたアドベンチャーゲームです。
企画・脚本・監督を当時名前の売れていたゲームクリエイター、故飯野賢治氏が担当し、話題となった作品です。
『エネミー・ゼロ』はアドベンチャーパートとアクションパートから構成されているのですが、そのうちアクションパートに出現する敵(エネミー)は“姿が見えない”(画面にまったく表示されない)ことを最大の特徴としていました。
プレイヤーはVPSと呼ばれる生体探知機を使い、敵を感知した時にVPSが発する音の高低やリズムで居場所を特定、対処しなければなりません。
敵の姿がまったく見えない(一部例外もありましたが)という『エネミー・ゼロ』のシステムは当時斬新なものとして注目されました。
■“目に見える”音を頼りに暗闇の迷宮からの脱出を目指す『Dark Echo』
『エネミー・ゼロ』では、不可視なのは敵クリーチャーだけでしたが、2015年にリリースされた『Dark Echo』では、プレイヤーは完全に暗闇の中を行動することになります。
『Dark Echo』のゲーム画面は基本的には真っ暗で、プレイヤーが歩く方向を指示すると、その方向を示す足跡と、歩くことで発生する音の“軌跡”だけが描画されます。
音が壁や障害物に当たると反射し、白いラインで描かれる軌跡が屈折します。
プレイヤーはこの軌跡が描く模様から、自分の周囲の状況を判断、推測しながら先へと進んでいくことになります。
しかし、この暗闇の迷宮にいるのは自分だけではありません。
先へ先へと進んでいくと、やがて自分とは別の赤い軌跡を描く謎の存在が現れます。
これこそが、プレイヤーを襲うクリーチャーの存在を示すもうひとつの軌跡です。しかも、赤の軌跡はプレイヤーが発する足音=白い軌跡を感知し、その後を追ってくるのです。
暗闇の中を手探りで進むような恐怖感が評価され、『Dark Echo』はiOSとAndroid版がリリースされた他、PC版も現在Steamで入手可能です。
■暗闇の3D迷宮に展開する恐怖『Stifled』
『Dark Echo』はもともとスマホ用として開発されたこともあって、シンプルな俯瞰視点でプレイするゲーム(とは言っても暗闇で何も見えませんが)でしたが、これをFPS視点でプレイする3Dゲームにレベルアップした作品が『Stifled』です。
『Stifled』でも、プレイヤーの発する“音”が周囲のオブジェクトに反射し、その範囲の中だけ、一時的に物が見えるようになります。
しかし、『Dark Echo』との違いは、その音の発し方です。
移動すると足音を発するのは『Dark Echo』と同じですが、これに加えて『Stifled』では、マイクを使って音声を発することで、自分のいる周囲の様子を確認することができるのです。
3Dで表現されるよりリアルな迷宮の中を、自分の声を頼りに進んでいく……最近、動画配信サイトで人気のゲーム実況動画向けの作品ではないでしょうか?
もちろん、このゲームにもプレイヤーを襲う敵が存在します。
時に暗闇の中で息を潜め、恐ろしい怪物をやり過ごさなければいけないその恐怖感は、他のゲームでは体験できないものになるでしょう。
『Stifled』はPC版が2016年12月13日にSteamから配信される他、PlayStation4とXboxONEへの移植も決定しています。