人形というものには、可愛さと同時に、どこか不気味さがつきまとっています。
人形にまつわる都市伝説は国内外、多くの話が存在しますが、特に国内で語られることの多いのが、リカちゃん人形にまつわる都市伝説です。
■国民的玩具・リカちゃん人形
『リカちゃん』は玩具メーカーのタカラ(現タカラトミー)が1967年に発売した着せ替え人形です。最初はアメリカで人気のあるバービー人形のサイズに合わせたドールハウスの販売も企画されましたが、サイズ的にバービー人形そのままだと日本の住宅事情に合わないことが判明、そこで日本向けにサイズダウンされて作られたのが『リカちゃん』でした。
累計5000万体以上が販売されている『リカちゃん』。「香山リカ」というフルネームを始め年齢や家族構成、友人や将来の職業など詳細な設定が作られており、単なる人形の域を超えて、タレント活動を行うに至っています。
リカちゃん関連のサービス事業として特筆すべきものに『リカちゃん電話』が上げられます。特定の番号に電話するとリカちゃんのお話が聞けるというもので、1968年に開始され、、現在でも月に1万件ほど電話がかかってくるということです。
誰もが知っている知名度、詳細な設定に裏付けられた人形を超えた存在感、そして都市伝説の題材になりやすい電話との関係……こうした条件があるせいでしょうか。『リカちゃん人形』はしばしば都市伝説として語られることがあります。
■『リカちゃんからの電話』
リカちゃん人形にまつわる都市伝説として、一番有名なのは『リカちゃん電話』でしょう。
実在する「リカちゃん電話」になぞらえた内容はこのような感じになっています。
ある女の子が留守番をしている最中、退屈になって「リカちゃん電話」に電話する。すると、リカちゃんの声で「お電話ありがとう。今おうちにいるの」と応える。もう一度電話をしてみると、今度は「お電話ありがとう。今お出かけ中なの」と言う。
話す内容が変わるんだと思った女の子がもう一度電話すると、リカちゃんは「お電話ありがとう、いまあなたのおうちの前にいるの」と答えた。怖くなった女の子は慌てて窓から家の前を確認する。しかしもちろん、リカちゃん人形の姿はない。なにかの聞き間違いかと女の子がほっとしたその時、家の電話が鳴る。電話に出た女の子はリカちゃんの声がこういうのを耳にする。
「もしもし、わたしリカちゃん。いま、あなたのうしろにいるの」
同様の内容を持つ「メリーさんの電話」という都市伝説も有名ですよね。
『リカちゃん電話』のサービスが開始された時期を考えると、こちらの都市伝説の方が原型かもしれません。
■『三本足のリカちゃん人形』
リカちゃん人形にまつわる都市伝説としてもうひとつ有名な話が『三本足のリカちゃん人形』でしょう。
ある女性がトイレで、床に落ちているリカちゃん人形を見つけ、拾い上げる。
女性はその人形に三本の足があることに気づく。驚いて人形を放り出すと、どこからかリカちゃん電話で聞いたことのある声が聞こえてくる。
「私リカちゃん。呪われてるの。呪われてるの。呪われてるの……」
女性は急いでトイレから逃げ出すが、その声は耳から離れず、耐え切れなくなった彼女はついに発狂して、自分の両耳の鼓膜を突き破ってしまう。
こちらの都市伝説もやはり『リカちゃん電話』に影響された内容です。
都市伝説には、その内容を打ち消す、あるいはその内容がさも事実にもとづいているかのように説明する“対抗神話”と呼ばれるもうひとつの噂話が生じる場合がありますが、この『三本足のリカちゃん人形』には有名な対抗神話があります。
それはメーカーの生産ラインの問題で誤って3本足のリカちゃん人形が製造されてしまい、その何体かがそのまま市場に流通してしまった、というものです。
身近な存在だからこそ、都市伝説化した『リカちゃん人形』。
これからも、新たな都市伝説を生む母体になっていくのかもしれません。